
日中両政府は22日、閣僚級のハイレベル経済対話を東京都内で開いた。中国側がトランプ米大統領の関税強化措置を念頭に、日本に経済や貿易での協力を要請したが、日本側は慎重な姿勢を示した。日本と経済的なつながりが強い中国との連携は重要だが、中国が繰り返す経済的威圧は世界経済をゆがめており、安易に手を取り合えば混乱を加速させかねない。日本は米国の動きもにらみつつ自由貿易の枠組みを堅持できるかが問われる。
日中のハイレベル経済対話は2019年4月以来、6年ぶり。日本側は岩屋毅外相ら、中国側は王毅外相らが出席した。
王氏は対話で、トランプ氏による関税政策を念頭に「世界経済の構図が深刻な変化に直面している。保護主義が横行している」と強調。日中の経済協力の強化を求めた。
一方、岩屋氏は経済対話で「両国が有する可能性を協力へと具体化するために議論を深めたい」と述べるにとどめた。
日本もトランプ氏の関税政策に翻弄されているが、「トランプ関税で日中連携のような形にはならない」(日本政府関係者)。中国も経済的威圧に加え、巨額補助金による過剰生産で世界市場を混乱させているためだ。
王氏はハイレベル経済対話に先立つ日中韓外相会談で日中韓の自由貿易協定(FTA)の交渉加速に期待を寄せた。トランプ氏が嫌う多国間連携に秋波を送る格好で、日本主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟にも意欲をみせる。
中国という大市場は依然魅力だ。だが中国の経済的威圧などは自由貿易を阻害する行為にほかならない。日本には自由貿易の牙城を守るため、米中の動向をにらんだ慎重な対応が求められる。(中村智隆)